クリニック地球33番地は消化器病学会専門医・日本肝臓病学会認定肝臓専門医が診療しています。内科・消化器疾患(肝臓病、胃腸疾患など)でお困りの方のご相談をお受けいたしております。

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院長コラム

院長からのコラムのご紹介です。医療・症例に関する情報を掲載してまいります。
高知新聞(夕刊)・ あしすと健康アドバイスに連載された記事です)

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A型急性肝炎 <春先の急性肝炎>

A型急性肝炎はA型肝炎ウイルスの経口感染によって引き起こされます。上下水道などの衛生環境が整備されたわが国では、もはや大規模な集団発生はみられませんが、時に家族内発生が観察されます。散発性急性肝炎のなかでは、今でもA型急性肝炎の割合は多く、毎年3-4月をピークに冬から春先にかけて多く発生します。診断は、血液検査(IgM型HA抗体が陽性)で容易に確定されます。発症の1-2ヶ月前からの生の魚介類(特に生かき)の摂取や衛生環境の悪い海外への渡航が原因となることがあります。全身倦怠感、食欲不振、黄疸、発熱(病初期には38℃以上の高熱)などの症状をみますが、経過は良好で2-3ヶ月で治癒し、慢性化しません。時に治癒が遷延する例、急性腎不全の合併や劇症肝炎を発症する場合があり、入院治療が原則です。特に高齢者では重症化の頻度が高く注意が必要です。ワクチンによる予防も可能で、衛生環境の劣悪な海外への渡航時などに用いられています。


B型慢性肝炎とその治療

現在、日本におけるB型肝炎ウイルスキャリア数は、100万人前後と推定されています。持続感染の主な原因になる母児感染は公費負担による母子感染防止事業により著明に低下しました。成人以降の初感染(性感染症)のほとんどは一過性感染で、少数の重症肝炎(劇症肝炎など)以外は良好に治癒します。B型慢性肝炎はC型肝炎と同様、自覚症状がほとんどなく、気付かないうちに肝硬変や肝癌に進行することがあります。従って、定期的に検査を受け、肝臓の状態や肝炎の進行の程度、またB型肝炎ウイルスの量や性質の変化などを知ることが健康を管理する上でとても大切になります。治療では、従来のインターフェロン治療に加え、ラミブジンやアデホビルなどの経口抗ウイルス剤が開発され、治療の選択肢が広がりました。さらに、抗ウイルス作用が強力で、薬剤耐性株の発現率が非常に低い、経口抗ウイルス剤、エンテカビルも使用可能になり、その臨床効果に期待が寄せられています。


B型慢性肝炎の自然経過

日本のB型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者(キャリア)の多くは、出産時母児感染や3歳未満時に水平感染しキャリア化したものです。多くは25歳頃までに肝炎を発症し、その後80%以上はHBe抗原が消失してHBe抗体が出現(セロコンバージョン:SC)し、ウイルスの増殖が停止し無症候性キャリアとなります。つまり肝機能の値(GPT)が正常化し、肝炎は沈静化する。この場合、肝病変は軽微で肝硬変に進展することはなく、肝癌発生の可能性も低く、臨床的に問題は少ない。しかし、肝炎発症後もSCしない例、SCしてもHBe抗体陽性でHBVが増殖する例では慢性肝炎が進行する。GPT高値が長期持続する活動性慢性肝炎例の多くは肝病変が進行し、肝硬変になったり、経過中に肝癌を発症することが多い。ただ、C型肝炎の自然経過と異なる点は、活動性肝炎の像を示していても、その後自然経過中にSCし肝炎が沈静化する例があることです。GPT高値(150-250以上)の活動性肝炎でHBV増殖があまり強くない場合、30-35歳までに自然にSCし肝炎が沈静化する例が見られます。


C型慢性肝炎とその治療

C型慢性肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染により肝臓に障害が起こる病気で、自覚症状に乏しく、放置すれば、長い経過のうちに肝硬変・肝癌に進行します。都道府県別肝疾患死亡比率でみると、高知県は最も上位のグループに属しています。C型慢性肝炎治療の第一目的はHCVを駆逐し肝硬変・肝癌への進行をくい止めることです。日本のHCVは2種類あり、1型は2型に比しインターフェロン(IFN)が効きにくく、またウイルス量が多いほどIFNが効きにくいことが分かっています。
近年、ペグインターフェロン(注射剤)とリバビリン(経口抗ウイルス剤)の併用療法が可能になり、完治率(ウイルス消失率)が著明に上昇しました。すなわち、患者数の一番多い難治群(1型高ウイルス群)の完治率は50-70%、それ以外(1型低ウイルス群および2型ウイルス)では80-90%以上と以前には考えられない程の治療成績が得られています。副作用も随分軽減されており、多くの患者さんが仕事をしながら受けられる、負担の少ない治療法(週1回の外来通院治療)です。しかし、逆に言えば、難治群の30〜50%は、残念ながら完治しないことになりますが、仮にHCVが消失しなくても、IFN治療後、肝炎が鎮静化した状態(肝機能を示すGOT・GPT値が正常で経過)が持続すれば肝硬変・肝癌への進展の危険性が大幅に減少します。
現在、従来型IFNの使用法については、以前あった保険診療上の規制が緩和され、患者さんの状態にあった投与が可能になっています。高齢者や、体力がなく通常のIFN治療に耐えられない患者さんでは、副作用がでない少量のIFNを、2年以上の長期に間欠投与し、GOT・GPTを低値に保てば、肝硬変・肝癌への進行をくい止めることも可能です。また肝硬変でも、IFNによる治療が可能になりました。
種々の理由でIFN治療ができない場合は、瀉血療法(鉄過剰状態のC型慢性肝炎に有効。献血時と同じ方法で血液を取り去る)や従来の肝庇護剤(強力ミノファーゲンC、ウルソ、小柴胡湯など)などにより、肝炎が鎮静化した状態を長期に保つことが必要です。
現在、次世代治療薬、HCV NS3プロテアーゼ阻害剤が開発中で、新しいクラスのC型慢性肝炎治療薬として期待されています。HCVの複製にはNS3プロテアーゼの活性が必要ですが、新薬はその活性を阻害します。第I相試験で、HCVウイルス量とGPTを強力かつ速やかに減少させることが示され、現在、大規模な第II相開発試験が行われており、数年の内に、日本でも使用可能になると思われます。


肝機能「正常」のC型肝炎

C型肝炎ウイルス(HCV)陽性者の中には、肝細胞障害の目安であるGPT(ALT)値が基準値(40IU以下)以内の方も多くおられます。従来、GPT値が正常の場合、定期的な検査のみで積極的な治療はなされませんでした。しかし、たとえGPT値が正常でも、すでに肝臓病は相当進んだ状態にある例も見られます。また現在、GPT値が正常でも、数年内にGPT値が基準値を超えて高くなり、病気が進行する例も多く見られます。GPT値正常のC型肝炎例に対する厚労省の治療ガイドラインでは、GPT値と血小板数の数値を組み合わせ、治療の必要性を判断するよう勧めています。血小板は慢性肝炎の進行とともに、徐々に少なくなって行くことがわかっています。例えば、GPTが31-40IUで血小板15万未満の場合、HCVのウイルス量、遺伝子型、年齢などを考慮し、通常のC型慢性肝炎に準じて、インターフェロンなどの抗ウイルス療法を選択するよう勧めています。HCV陽性の方は、たとえ肝機能「正常」でも、治療の必要性の有無について主治医にご相談ください。


C型肝硬変に対するインターフェロン治療

ペグインターフェロンと抗ウイルス剤リバビリンの併用療法が使用可能になり、現在では、C型慢性肝炎の6-7割以上で完治が望めるようになって来ました。しかし、C型慢性肝炎の患者さんは高齢化が進んでいて、既に肝硬変にまで進展している例が少なくありません。従来、C型肝硬変に対しては、医療保険上の制約があり、インターフェロンが使用できませんでしたが、平成18年4月より天然型インターフェロンβがC型代償性肝硬変(黄疸・腹水など肝不全症状のない肝硬変)に使用可能になりました。インターフェロンが効きにくい症例(ウイルスが1型で高ウイルス量)には使用できませんが、それ以外の症例を対象にした臨床試験では約40%が完治しています。このインターフェロンは、副作用の出現頻度が低く、高齢者にやさしいとされていますが、使用にあたり、前もって肝硬変の状態を詳しく検査し、インターフェロン治療が適切かどうか調べておくことが大切です。


C型慢性肝炎の瀉血療法

過剰の鉄による肝毒性が、C型慢性肝炎で問題となっています。体内貯蔵鉄を反映するフェリチン値や肝組織中の鉄量の検討により、C型慢性肝炎の多くが鉄過剰の状態にあるとされています。C型慢性肝炎では、消化管からの鉄吸収の増加、吸収された鉄の肝への取り込みの増加があります。さらに、C型肝炎ウイルスを感染させたチンパンジーに鉄を投与すると鉄が急速に肝臓に沈着し、肝炎が悪化するとの報告もあります。これは、鉄の触媒作用により肝細胞の中で、細胞毒性の非常に強いフリーラジカルが作られるためです。過剰の鉄は瀉血療法(献血時と同じ方法で血液を取り去る)で低下させることが可能です。インターフェロンや一般肝庇護療法に抵抗性のC型肝炎に対して保険適用されており、症例により肝炎を長期に鎮静化させることが可能です。鉄制限食の併用(シジミ、アサリなどの貝類、レバー、馬肉などの肉類、ひじき、緑の濃い野菜などを避ける)は、さらに効果的です。
便利な食品群別鉄含有表なども作成されていますので、ご相談下さい。


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